V代役はプレッシャー
知人の結婚式に出席。客として行ったのに、なんと司会をするハメになってしまった。
もうお客さんもみんな席について開始の時間になっているのに、いつまでたっても式が
始まらないから、「おかしいな」とは思っていたんだ。そしたら、式場の総支配人みたい
な人が俺の席にやって来た。
「司会者が式場に来る途中で、すごい渋滞にはまってしまって遅れておりまして、新郎新
婦にも、ご両親にもご了解をいただきましたから、代わりに司会をお願いできませんでし
ょうか」
こんなことを頼まれるのも、もう何百組と司会をしてきで、都内の式場はほとんど全部
制覇しているし、式場の人達もみんな俺の顔を知っているからだろう。
でも、俺は今日は客として来てるんだし、何も用意していないからって断わったんだけ
ど、「ご祝儀もお返ししますし、ギャラも出しますから」って言う。新婦も、簡単な進行
表みたいなのがあるからと言って、新婦のお母さんだか係の人だかがロッカーまで取りに
行った。ここまで言われちゃ仕方がない。くしゃくしゃになったその紙を見ながら、とり
あえず俺が司会をすることにした。
「実は私、俳優の森川正太と申しまして、今日は親友のOOさんのお祝いに駆けつけたん
ですが、本来、ここに立って司会進行をする人聞が、大渋滞でまだOOにいるそうでござ
います。これでは、着くまでに一時間はかかりますので、借越ですが、急きょ私が、司会
進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
こんな風に謙虚ぶって挨拶しながらも、実は心の中ではものすごく燃えていた。代役司
会はこれが初めてじゃないけど、ものすごく燃える。ちょうど、別の役者と役を張り合っ
て勝ち取った時や、急な代役の話が来た時に、「あいつよりうまくやってやる」と思うの
と同じだ。今日も、「今進行表をもらったばっかりだけど、絶対うまくやってやる」って
思った。もうメラメラきちゃって、ギャグなんかパンパン繰り出して、しかも、今日はそ
れが気持ちいいくらいに、ことごとくはまった。快感!
一時間くらいして、やっと本当の司会者が「すみません」と息せき切って来たから、
「本当の司会者が今到着されましたので、司会を代わらせていただきます」って言ったら、
列席者はみんなもう酒が入っちゃっているから、「代わんなくていjヨ。森川さんやれ
Il-- 結局、そいつが俺の席に座って、俺が最後まで司会をした。
司会者冥利につきるつてのは、まさにこのことだ。
代役司会はこれまで、徳光さんや小野ヤスシさんの代わりというのもやったけど、あの
時はものすごく緊張した。みんなが、徳光さんや小野さんが来ると思っているところに俺
が出ていくんだから、「なんだ、徳光さんの司会見たかったのになア」とか「小野さんの
司会じゃなかったの?」ということになる。
終わってから、「やっぱり徳光さんの司会の方が:::」なんて思われたら、メンツ丸つ
ぶれ。「よかったね、お母さん。今日は司会で盛りあがったね」と言わせようとするから、
ものすごいプレッシャーだ。だから、本番に入ったら、ウケると思ったら何でもする。で
も、そのぶん、ちょっと肩に力が入っちゃうかな。
今日はメラメラだけでプレッシャーはそれほど強くなかったから、自分でも五本の指に
入る出来だった。すごく気分がいい。